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「雨ニモマケズ」長岡輝子の朗読
牛丸先生は、『雨ニモマケズ』は
賢治の「願い」だと前回の講座
では話しましたが、長岡輝子の
朗読を聞いて、「祈りのような気
持ちだったと思う」と今回その思
いを深めていました。
漢字とカナの平板な文字が朗読
によって、こんなにも豊かな世界
を表してくれるのですね。
この朗読には驚きです。
















所々でこぼれる先生のエピソード
は教師をされている方には、見逃
せない話と思いますので紹介して
おきます。
こぼれ話@
「思うと考えるの違い 」


こぼれ話A
「どういう問いを立てるか」





















『雨ニモマケズ』には仏教思想
で、無貧・無瞋・無痴の考え方
が込められていると、解く。














玄侑 宗久の『中陰の花』にも
言及する。




































教師としての豊富な経験談も
魅力の一つ

今こそ日本人全員に『よだかの星』を 

『宮沢賢治を読もう』A 『よだかの星』『双子の星』  《4月24日》


児童文学者の牛丸さん

みにくい鳥の物語

「今こそ、日本の皆さんに、賢治の『よだかの星』を、読んでもらいたい」
牛丸先生が講座の最後の方で話された言葉です。震災に遭い、いま日本で起きている事態に対し、先生がその思いをうったえました。
その真意は如何に。
カルチャーカフェ『宮沢賢治を読もう』Aのレポートをお届けします。

講座は、『よだかの星』を参加者みんなで朗読しながら進みました。段落ごとに先生の問題提起と解説がはいり、参加者は頭も働かせて内容の展開を追います。
「よだかは、実にみにくい鳥です」と始まる物語。 「よだか」は実際に生息する野鳥で、写真を見るとたしかに醜いかもしれません。物語の中では、周りの鳥や鷹などから、嫌われ仲間はずれにされてしまう。鷹からは、「名前を変えろ。市蔵にしろ」と忠告され、つらい思いをする。
「自分の名前が消されることが如何に酷なことか、それは自分の存在を失うことに等しい」と先生も体験を語り、よだかの気持ちを察します。

星になった「よだか」

よだかは、夜になると餌を獲りに空中を飛んで、羽虫や甲虫を呑み込んでいく。毎晩たくさんの虫を自分が殺していることに罪悪感を覚え、「つらい、つらい」と嘆く。「もう虫をたべないで餓えて死のう」とさえ思う。
前段のつらさと後のつらさの中身の違いを先生が指摘し、二重の重しを背負うよだかの痛みを、参加者も推し量ります。
賢治が菜食主義だったことも軽く触れました。

よだかは、お日様に話しかけ、夜の星に話しかける。「どうか私をあなたのところにつれてって下さい。やけてしんでもかまいません」
しかし星たちは、よだかの願いなど聞き入れもしない。よだかは、空へ空へと上っていきますが、やがて息絶えてしまう。
しばらくして、よだかは自分のからだが青い美しい光になって燃えているのを見ます。そう、夜空の星になったという話で幕を閉じます。

人間の尊厳への警告

コーヒーを飲みながら、読み終えての感想を会場に求めました。
「いったいこの物語は、どんな考えで書いたのでしょうか?」、どうも結末が腑に落ちないという方から質問が飛びます。
「普通の小説や物語の顛末でなく、宇宙観とか、生命観を感じる」
「名前を変えろといわれ、市蔵という人間の名前をつけさすところが面白い」
「よだかが、虫を食べるシーンが、とてもリアルだ。科学者の目で表現されている」

さて、後半。ブレークタイムが終わると、先生はやや厳しい表情で、今の原発事故について触れました。
参加者のTさんが、これについてレポートを寄せているので、引用させてもらいます。

聞いていて涙が

牛丸先生の講演、宮沢賢治の「よだかの星」を取り上げる中で、「人間の尊厳」について話をされていた。
今、地震にともなう福島の原発事故の中で、他県に避難した福島県の人々への差別的な対応が問題になっている。旅館などで福島から来たと言ったら入館を断られたとか、駐車を断られたとか、福島から来たと知ったとたんに身を遠ざける人がいるとか、小学校では放射能が移ると、いじめに合っているとか、等々。
テレビでは、「日本は一つ」とか「あなたは一人ではない」とかのメッセージが踊っている。他方で、これらの事態が生じている。
先生は、いまこそ日本の人全員に「よだかの星」を読んでもらいたい、と言っていた。聞いていてなにか、涙が出て来た。(K・T)


先生の言葉を復唱します。
「今まさに福島県民は、「よだか」にされようとしている。これは理不尽な差別をする人間の愚かさだ。そんな人間への賢治のメッセージとして読んでほしい。三悪が無くなる世の中にしたいという賢治の警告として」
「福島県民の故郷へ帰りたいという思いは、懐かしみではなく、名前を奪われると自分の存在すら無くしてしまうように、自分の尊厳を守るために故郷に帰ろうとしている。NHKでもいいから『よだかの星』を放送してもらいたい」
講義は、死んで成仏するまでの間の「中陰」についても言及し、よだかの気持ち、賢治の意図に思いを巡らせました。

牛丸先生は、参加者を賢治の文学の世界へ、宇宙へと飛び立たせてくれたようです。
そんな気持ちがよく表れているYさんの感想をどうぞ。

光の世界を自由に飛び回っている気持ち 

本当に、みんなで声を出して読んだ。合唱はともかく、文章を一緒にみんなで声を出して読むということに感動した。僕は一体“文章を一緒に読む”というどこに感動を覚えているのだろうか?

 宮沢賢治の世界は広い、果てしなく広い。全てが受け入れられてゆくようなこころの世界を垣間見る気持ちがした。
 いま、牛丸先生によって僕や僕たちは、光の世界、真っ暗闇の世界から、いろいろな生き物になって、自由に飛びまわっているような気持ちと、それだけではなくて、「よだかの星」に込められた、賢治の祈りのようなものまでも、感じることが出来た。
本当に興味が尽きない。先生の健康がいつまでも続きますように。(J・Y)

前回から初参加の女性は、物語の書かれた資料に、そのイメージを色鉛筆で色づけしていました。こうすると、後から物語のイメージが思い浮かぶのだとか。下記の写真

本講のタイトルは「宮沢賢治を読もう」ですが、頭に“今こそ”を付けて「今こそ、宮沢賢治を読もう!」が、この講座のタイトルにふさわしいのではないでしょうか。
次回は、『セロひきのゴーシュ』を取り上げたいとのこと。
初参加の方も大歓迎です。お楽しみに。(記事=いわた)


こぼれ話@「思う」と「考える」の違い」

「思ったことを言うのは難しい」
教師をしていた頃の話しですが、小学校1年生に、物語を読んで、「どう思う?」と聞くと、いいとか悪いとか、あまり話が広がらない。そこで「何考えた?」と聞くと、わーっと発言する。考えたことが次々に出てくる。反応がいい。「思う」と「考える」は違うのかな、とまた別の小学校で試してみた。やっぱり同じ結果だった。3度目の正直と思い、また別の小学校でやってみたが、そこでも同じ結果になった。教師の方は、「思う」方がやさしくて「考える」方が難しいととらえているが、子どもの方は反対のようだ。投げかけ方でずいぶん違う、という話でした。


こぼれ話A「どういう問いを立てるか」

牛丸先生の教師時代の話。 ある学校で若い先生とのやりとり。
一つの物語を読み、生徒にその主題や作者の意図を考えさせるという授業で、どういう問いかけをすれば生徒は考えられるか――。
若い先生は、物語の最後にバラが枯れてしまうことをとりあげ、「なぜバラは枯れてしまったか」という問いを選んでいた。ところが牛丸先生は、「それでは、科学的な答えしか思いつかない。水をやらなかったからだとか、世話をサボったからだとか。そうではなく、バラはどんな気持ちで枯れていったのかを考える方がよい。そしたら生徒たちは泣くよ」とアドバイスしたという。
授業はその通り、バラの気持ちを考えていくうちに、生徒たちはオイオイ涙を流しながら発言が続いたという。
「よだかは、なぜ星になったのでしょう?」では、文学にならない。どんな気持ちで星になったのかを考えないと。


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