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あなたの原風景は? 

映画『男と女』((1966年、監督クロード・ルルーシュ)

フランスまるかじり 大嶋優のオーシネマ・カフェ 第22回 《1月12日》

 >>>吉田さんのレポート  >>>記者のレポート



     講師の大嶋優さん(関西学院大学フランス語講師・翻訳家)

音楽だけが一人歩きし、今でもよく耳にする「シャバダバダ、シャバダバダ……」の曲は、映画『男と女』の主題歌である。曲は知っていても本作の映画の方はあまり見たことがないという人も多いようだ。

今回大嶋さんが取り上げた作品である『男と女』は、大嶋さん自身の原風景と重なる映像が舞台になっているという。その大嶋さんの原風景とは、フランスとイギリスを隔てるドーバー海峡沿いのブローニュの港町で、昼間でも人っ子一人いない淋しいところだそうだ。講座の中で、参加者に向けて「あなたの原風景といえる場所は、どんなところですか?」と問いかけられた。

ある男性からは「バイクで行った北海道の大草原と阿蘇です」。年配の女性からは「20歳の時に旅をした上高地の大正池で、池にある枯れ枝を見た時です。今はもうその木は朽ちてなくなってます」

原風景は?と聞かれて答える場所は、たまたまだろうか、共通して人がいない寂しい場所を答えていた。そう言う記者も、霧ヶ峰高原の一角にある八島湿原の風景を思い出す。霧に覆われ葦が茂る湿原地帯だ。故郷の風景や旅先で心に止まる風景がいつまでも記憶の中に留まっていく。それは何を意味しているのだろうか。



そして大嶋さんの原風景はフランスの西海岸沿いの風景。
さて、今回の講座について吉田さんのレポートから紹介したい。


モノクロとカラー映像の意味は?



映画は観たことはなくても、一度は「この音楽聴いたことがある」と、思うかどうか?『男と女』が今回の取り上げられた作品だ。

映画を観る時、“観方”のようなものを自分で持って見ると、どうなるのか?今回初めて大嶋さんの映画解説を聴き、大嶋さんが今でも考え疑問に思っているという3点というのが気になった。



その中でも、繰り返し出てくる、カラーの場面と白黒の場面とが「一体何を意図しているのだろうか?」という疑問に、いつの間にかとらわれるような気持ちが出てきて、「ここの部分は、登場人物の心理面を映し出そうとしているのかな?」「この部分は過去の追想場面だから、白黒にしているのかな?」と、いろいろ自分で想像してみたが、どうもいま一つピンと来るものではない。想像を楽しむというよりは、何かとらわれ感が出てきて、映画の中へ入って行くというより、より傍観者的な鑑賞になってしまったかもしれないなと思う。

肝心の映画の内容についてだけれど、はっきり言って「もう一度観たい」とはならないと言ったらよいのだろうか?歌と風景については別としても。これをフランス的というのだったら、とてもさらっとした淡白な映画だったなあ。



『男と女』というタイトルから、かなり濃密な性的描写もあるのかな?と観る前には思ったけれど、背中に回った彼の指先が、彼女の手に触れるかどうかといった具合のさらっとしたものに、どこか期待が裏切られたような気がした。
「愛しています」という電報を読み、レース場から往復6000キロの道を走る。海辺で子ども達と遊ぶアンヌを見つけ、車から飛び降りて、一目散に彼女のところへ走り寄り両手で彼女を抱きしめ抱き上げる。子ども達はすっかり仲良しだ。あとは二人。

アンヌの心の中には事故で亡くなった夫が生きていた。心惹かれ、肉体も結ばれた二人の中に起こったこと。汽車で帰ることになったアンヌ、僕の心はとても淋しい。「パリへ直行するのか?」と男が聞くと、「途中乗り換えてゆく」と応えるアンヌ。「何故そんなことを聞くのかな?」と僕は疑問に思った。それは、映画の最終場面を見るに及んで、どこか頷くものがあった。

列車を追いかける彼。そしてとうとう到着駅に先回りする。僕の心は、まるで彼になったように、「今か、今か」と、列車から降り、歩いてくる彼女の姿を思い馳せ、心が躍っている。
そして、とうとうアンヌの姿がプラットホームに見える。ふたりは抱き合う。本当にここで僕の心は解き放たれ、とても幸せになる。ここまで書いてきて、初めは「2度目はないな」と思った映画だったけれど、改めてもう一度ゆったりとした気持ちで誰かと観てみたい気持ちになってきた。何か不思議な気持ちだ。まだまだたくさん観ていないところを感じていても、つかみきれていないところがたくさんあるような、そんな気がしてきたから。

(吉田順一)    このページのトップへ


大嶋さんの話では、「監督の主張は、映画のストーリーにあるのではなく、映画に詰め込まれたセリフの中にあるのではないか」という。それを聞いてなるほどと思う。フランス映画では、監督のオマージュとして言葉や人や芸術作品が、映画の中に登場する。それが脈絡もなく映画の一コマだったりするので、あまり意味を感じとれないが、実は、そこに込められているものがあるとしたら、ワンシーンや一つのセリフから監督の意図を汲み取ることも可能かもしれない。
そこで、記者が関心を示したセリフ、芸術家・ジャコメッティの言葉について、次のレポートで語ってみたい。 (記者:いわた)

記事は続く>>>記者のレポート「芸術より人生だ」その真意を探る 

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