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現代ニッポン社会へ風穴を開ける? 

映画 『勝手にしやがれ』(1959年、監督ジャン・リュック・ゴダール)

フランスまるかじり 大嶋優のオーシネマ・カフェ 第18回 《8月11日》

レポート 吉田さん 
記者のレポート


        講師の大嶋優さん(関西学院大学フランス語講師)

今回の解説は、ヌーベル・バーグの代表作と言われる1960年公開の映画『勝手にしやがれ』。お金をかけずに制作されたこの作品は、社会への反抗心と無から有を生み出す新しい発想と共に誕生した。大嶋さんは独自の論調で、その時代背景や思想性を論じた。フランス語の原題と日本語タイトルの違いやセリフと字幕の違いなどを指摘しながら、作品に込められた意味を紐解。なるほど、こは、たんなる娯楽映画ではない、哲学的な命題とセリフが飛び交い、結末では、私たちに何かを突きつけてくるようだ。果たしてその問いかけが現代ニッポン社会にも一石を投じるものになるかどうか。 講座を聞いた後で映画を鑑賞した吉田さんのレポートを紹介する。 (いわた)


原題「息を切らして」が問いかけるもの


ミッシェル

「次にはどんな映画を紹介しようかな?」と、大嶋さんの口から発せられた言葉。そんな中に、随分前からこの『勝手にしやがれ』は、上がっていたように思う。
僕の記憶にはこの映画を観たということはないのだけれど、日本語の訳題『勝手にしやがれ』から受ける鮮烈な印象だけが、勝手に僕の中で一人歩きしていたのかな? と映画を観て3日程たった今感じる。

「ヌーベルバーグ」 言葉では聞いて知ってはいたが、一体それはどういうことなのか?
大嶋さんの解説を通して初めてフランスという国の1950年代後半から、60年代へと動いてゆく歴史という中での、意味合いというものを知るキッカケとなった気がしている。


パトリシアと


目をつむり映画の場面を思い起こしてみる。ミッシェル役のベルモンドと、ジーンセパーグのパトリシア、、、、、、白黒の場面、路上で「、、、トリビューン。。。。」と言って新聞を売るパトリシア、「新聞売り子?」と思うような、何か堂々とした歩き方 態度が僕にとっては印象的だった。そこへ、ミッシェルがやってくる。「愛しているからやってきたんだ。」と言うミッシェル。とてもシンプルだ。

社会が中央集権的な権力によって統制されてゆくことに、反発や危機を感じた人たちはそれぞれの分野において行動を起こしていったのだろう。この映画も、その意味からすれば、ひとり監督ゴダールの映画作品というよりは、何人もの人たちによって創り出された、自由の社会を希求する映画とも言えるし、現状社会に対する抗議の意味をも込めた、非常に示唆に富んだ、しかも態度にも表された映画と言えると思う。



映画は最終章、パトリシアは警察へ「ミッシェルが今ここへきた。」と電話で密告する。
それをミッシェルに伝え逃げるように言う。しかし彼は、15分後にお金をもって来るという友達を待つ。やがてその時間に、ミッシェルは外へ出る。お金を持った友達が車でやってくる。ミッシェルにそれを渡す。と同時に、車の中からピストルを彼に渡そうとする。ミッシェルはそれを一度は受けるが即座に車の中へ投げ返す。後方から警察が追ってくる。走って逃げようとするミッシェルの前にピストルが再度放り投げられ、路上にころがる。走りながらこれをミッシェルは拾う。唯拾う。そして走る。

後ろから追いかける警官がミッシェルに発砲する。弾はミッシェルの体に命中する。右に左によろけながら、車と車の間を走ってゆく。パトリシアも後ろから追いかける。道路がT字路になるあたりで、ミッシェルは前のめりになって転倒する。仰向けにミッシェルが体の向きを変えた時、その頭の前には、追いかけてきた二人の警官、そしてパトリシアがいた。

そのパトリシアに向かってであったろうか?ミッシェルは「くそお」とか、気に食わない時にする3つの顔面表情をして見せた後、例の唇を指でなぞる仕草をした後で、「デイギュラス、、、」と言って、息絶える。



パトリシアが警官に「なんと言ったの?」と聞く。「あんたは、最低だ。」って、、、と応える警官。パトリシアには「デイギュラス」の意味はわかっていたのだ。その言葉が何に向かって発せられたものなのかは。画面は最後、アップになりパトリシアの表情に。そして、初めて彼女がミッシェルの行為を真似るようにして、指で唇をなぞる。

ここに、僕ははっきりと「愛しているのか、愛していないのかわからない。」「何故、ミッシェルに惹かれるのかわからない。」とずっとしてきた彼女の中に、彼女自身の意志がみえた感じがした。それは、“息を切らして”という映画の原題にも通じる、社会に対する反対の自由欲求の表れにも観えた。

(吉田順一)    このページのトップへ



大嶋さんの解説の内容と記者の感想を後日レポートしたい。
(記者:いわた)


記事は続く>>> 原題『息を切らして』―その真意を探る

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