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東北から鈴鹿から、街づくりを考える

「経済大国から倫理大国へ」、そのカギは?

第3回エコライフチャレンジセミナー 開催
 《11月12日》



東北の被災状況を映しながら、講演をする須藤氏

秋の第3回エコライフチャレンジセミナーが11月12日、NPO法人鈴鹿循環共生パーティー、NPO法人循環共生社会システム研究所(KIESS)、地域再生コーディネーター三重の会による主催と、NPO法人環境生態工学研究所(E-TEC)の共催、鈴鹿市の後援で開催された。
今回は、東北で環境問題を研究するE-TECのメンバーが講師に加わり、東日本大震災による環境破壊の調査報告とKIESS講師陣によるこれからの社会のあり方についての考察、そして鈴鹿での新しいコミュニティづくりの紹介、という三本立ての内容となった。
予定していた「ドイツからの報告」は、講師のハーン氏が来日直前で緊急入院したため、ハーン氏の講演は中止となった。

それぞれの研究者・発表者の発言を簡単にまとめさせて頂いた。
なお、 NPO法人環境生態工学研究所(E-TEC)についてはHPをご覧頂きたい。

 
開会の挨拶をする内藤正明氏。
「これまで循環共生社会システム研究所(KIESS)とE-TECのNPOがお互いに交流してきた。今年はここカルチャーステーションを会場にはじめて開催する。3月11日は世界にインパクトを与えた。この尊い犠牲を無駄にすることなく、これからの社会づくりに活かさねば、 罰が当たるでしょう。今日は被災された方々の生々しい報告が聞ける。それを題材にして考えていきたい」


被災地における環境問題の解決は



須藤隆一氏(E-TEC理事長・東北大学客員教授)は、微生物による水の浄化の第一人者。今回の東日本大震災の瓦礫処理の統括責任者を務めているという。環境科学の専門的な立場から現場を調査し、『東日本大震災被災地における環境問題の解決に向けて」と題して報告。 氏自身も岩沼市の自宅で被災され、その時の状況や体験も含めて語った。

「ライフラインが止まりわずかな水が配給されるにも2時間並んだ。やはり、水は人間にとって一番大切なものだと思った」
「数日間、騒音もなく光もなく、満天に輝く星を見た。子どもの時以来だった。本当の自然というのはこういうことかと思った」
「私はこの3月11日を境に人々の考え方は変わるんではないかと思った」と実感がこもる


大災害に伴う環境問題、廃棄物の処分、下水処理場の破壊問題、浄化槽の被害状況など、現地のスライドを映しながら解説。

その中で、瓦礫処理は入札で行われるが、仕事を終えてからでないと国からお金が下りないため、資金豊富な大型ゼネコンでなければやれないという矛盾点。予算をどこが出すかで国と地方がもめて時間がかかったこと。瓦礫作業の希望者がきわめて少ないことなどの問題点にも触れた。

大型の下水道施設は、処理施設や管路が破壊されるなど復旧には時間がかかるが、浄化槽は、
「我田引水になるが、震災や津波に強い。流されたり、壊されたりが少ない。修理すれば使える」ことを確かめた。

3月から垂れ流し状態になっているので沿岸水域は大腸菌の値が高くなっていることや生態系が破壊されている調査結果など、深刻な問題がある。

放射能を有する廃棄物、焼却灰の処理が今大問題であり保管場所がないことも訴えた。

今後に向けては、
「持続可能な社会を目指した復興をしなくてはいけない。しかし、一時しのぎ、現状に服するのに精一杯。最終的には、一次産業をベースに、農業、林業・漁業を豊かにし、その中でコンパクトな自立型コミュニティをつくるのが基本だろう。
われわれは、自然を征服したなどと思わずに、自然に謙虚でなくてはならない。
環境問題だけを解決するのではなく、将来の社会を目指した構築を復興の中で考えていく必要があるだろう」と結んだ。

海の生態系を取り戻すために



佐々木久雄氏(E-TEC理事)は、『被災後の気仙沼市及び南三陸町の沿岸海域における環境の現況』をタイトルに講演する。

海がきれいであることは人間の生活にとって欠くことのできない環境条件だ。その海の生態系を維持する上で海藻は重要な役割をしている。そこに着目した佐々木氏は、藻場の再生に力を注いでいる。
今回、震災で下水処理場が破壊されたため、海水の環境汚染調査にいち早く乗り出した。県も大学も地震で破壊され調査できる状態ではなかった。
「誰かが海の方から見ていかないといけない。ところが調査する船がなく、非常に苦労してとったデータです」と、調査結果と海底の様子を報告した。

「藻場が完全に消失している。底生生物がまったくいない。大腸菌群が天文学的な数値になっている。魚介類が獲れたとしても安心して食べられるものになるか心配している」と、その科学的、生物学的裏付けとなる現場調査を続けている。

また、NPOとしては、漁場環境の再生、特に藻場の再生につとめることと、持続可能な水産業の構築、そのためのモデルづくりを考えている。震災で水産業がやられたが、今までの水産業は果たして持続可能なものだったかを検証しつつ、循環型の持続可能なものを探っている。



「東日本大震災が問いかけるもの」
〜自然と共生する社会づくりに与える示唆〜




内藤正明氏は、『東日本大震災が問いかけるもの』と題してユーモアたっぷりに会場の笑いも誘いながら講義を進めた。

「3月11日は、自然の力を科学で抑えようという思い上がりに気づかされた。自然を克服するのではなく、“しなやかに対応”していく姿勢の大事さを教えてくれた。

しかし、 これからの社会のシナリオを考えたときに、技術をさらに進めて災害も克服する『高度技術型』の立場をとる人たちが今でもいる。大都会に住む人たちだ。都市環境の中では、自然に寄り添い、人の絆で維持する『自然共生型』のシナリオを示しても考えられないのは当然だ。

今回の震災で世界が注目したのは、日本人の行動規範だった。略奪や強盗もなく、助け合い譲り合っている姿に世界は感嘆の声を上げた。イスラム教の聖職者は『これぞイスラムの教えが受け継がれている』と言い、ハーバード大学のサンデル教授は、『人類にとっての新たな倫理観の形成に繋がるかもしれない』と語った。
関東大震災の後でも、フランス駐日大使が『彼らは貧しい。しかし高貴だ』という賛辞を述べている。

これでいいではないか。『彼らは豊かだ、しかし、がめつい、とか低俗だ』と言われるより。 この評価を喜んで受け入れたら。 日本は軍事力で世界征服はできなかったし、経済力でも世界を抑えることはできなかった。最後は、倫理力で、人を思いやる力で人を変えたとしたら最高の世界制覇になる。 彼らは貧しいといってもらおう。しかし高貴であるとね。見た目にはそう見えないですが(笑)」



「これからの地域技術の必要性」 




荒田鉄二氏(鳥取環境大学准教授)からは「これからの地域技術の必要性」と題して話が進められた。産業革命以降の技術、エネルギー、労働形態の変化を独自の視点で取り上げ、これからの産業の方向性を示す興味深い考察となった。

「産業革命の画期的な点は動力機械(エンジン)が発明されたこと。機械は大きいほど効率がよくなり、熱効率と労働節約という面で、巨大化してきた。労働者一人当たりの資本設備が増加している。たとえば電力会社は1人2億円の設備を使って働いているが、自営業者ではそれほどの設備投資はできない。そのため、個人事業者は減少し、サラリーマン社会になってきた。“働く”とは企業に就職することを意味するようになった。この構造を支えているのが石油エネルギーだ。

しかし、世界の石油生産は2006年にピークを迎え、既に減少局面に入っている。 私達は地球にある石油の半分を既に使ってしまった。他の天然資源も減少している。それに変わるものは自然エネルギーだが、大規模集中型のシステムには向かいので、小規模分散型になる。

石油が減少した時どうなるか、というドイツの研究報告がある。それによると、世界規模の金融システムは維持できなくなるという。結果的に産業は重装備化から軽装備化し、企業の形態や働き方も変わっていく。それにより私達の考え方や価値観も変わっていくだろう。

分散型社会では、技術もローテク化していく。大草原の小さな家のお父さんが、農民であり、大工であり、鍛冶屋でもあったように。株式会社が減り、サラリーマンが減り、自営業者や生産手段を持っている人が増えるだろう。これはある意味、経済の民主化と言えるかもしれない。インフラも小規模分散型に造り替えていく必要がある。キーワードは、脱石油・脱動力、小規模分散型、ローテク化だ」


ミクロの泡を使って環境を守る



「微細気泡の環境技術への応用」と題して吉岡修哉氏( 立命館大学准教授・E-TEC研究員)の研究発表。

微細気泡とは、極めて小さな泡のことで、その直径は、1千分の1ミリのマイクロメートル単位から、さらに小さなナノスケールの気泡を大量に生成する技術である。この技術を使い、環境再生と水質浄化の実験と研究をしているのが吉岡氏だ。持続可能で低コストの環境再生技術として進めている。 均一に生成される気泡だけでなく、不均等な気泡にも注目し、様々な応用実験を重ねているという。

微細気泡の技術は、医療にも役立つ。たとえば薬物を体内の特定部分だけに効かせることが出来る。微細気泡に薬を包み患部で破裂させるという技術だ。ドラックデリバリーといわれる薬物コントロール技術にも応用されている。

今回は、惣の関ダム(宮城県利府町)の水質浄化実験、工場排水をオゾン気泡を使って浄化する実験などの報告を行った。


セミナー全体の司会・進行をつとめたのは、 楠部孝誠氏(石川県立大学生物資源工学研究所)写真右

『鈴鹿カルチャーステーションの活動紹介』

坂井和貴氏(SCS代表理事)からは、鈴鹿カルチャーステーションの活動を紹介。

「環境問題、教育問題、経済問題、国際紛争など様々な問題がるが、人間の社会の中で起こっていること。結局は人間の問題であり、考え方や心の問題になってくるのではないか。それを個人で解決するのは困難。一人ひとりを取り巻く地域社会がカギになる。疑いや警戒をベースにした社会でなく、親しみや愛情を基調にした安心して暮らせる地域社会・コミュニティが作れないか、そういうコミュニティがあることが問題の解決になるのではないかと考えてきた。その基点になる場所としてこのカルチャーステーションを構想した。
『街の縁側』、『街の学び舎』、『街のエコステーション』の3つをキーワードにして始まった」

2年前の11月に構想を発表し、当時の写真を映しながら、これまでの経過と現在の活動状況を紹介した。


映像で、現在の鈴鹿カルチャーステーションの様子を映す。関係者にとっては感慨深いものがあったようだ。



市川哲夫氏(鈴鹿市議会議員)。 徳居町の里山の場をカルチャーステーションに提供した経緯を語る。市川氏は、環境問題に強い関心を持ち活動している。「里山に多くの方に来て頂いて自然の素晴らしさを感じてもらえたら」と話す。



高崎広氏(未来里山クラブ)。徳居町の里山での活動を語る。
「里山は豊かだ。どれだけ日常的に人が足を踏み入れているか。45年間人が入らなかったためにある意味豊かになっている。この1年間で150人くらい入った。主に“てっらこや“の子どもたちだ。子どもは未来だ。隣の山の人も使ってほしいと広がっている。最近は落ち葉堆肥をやろうと乗り出している。未来が少しずつ見えてくる活動をやっていきたい」

ワールドカフェ



報告会の後は、カフェでテーブルを囲み、思い思いに語り合った。

参加者の感想より

遠路ご足労いただいた講師の先生方に感謝いたします。大いに参考になりました。鈴鹿の街から明日の日本が見えるような気がします。(四日市市 70代 男性)

今でも“企業戦士”って死後にはなってないのでしょうね。『お金』で幸せになれないことはこの震災で証明されたのでは?? 次の世界をどう創っていくか。どういう世界を若い人達にバトンタッチするのか。倫理力ってよく分からないけど、人を思いやる力と解釈するなら、まさに「やさしい社会」では。過酷な(?)仕事を続けている子供達のことが気になりました。(市内 60代 女性)

後半、ちょっと(かなり?)難しかったですが、東北に役に立つように頑張って頂いているのですね。貧しく高貴な民族に戻れるよう、努力したいです。(50代 女性)

大震災をできるだけ忘れることなく、「人の生き方、幸せ」について改めて考えるスタートラインにするというお話に共感した。(経済・成長という言葉がいつも至上の課題だとは思いたくない)(市内 70代 男性)

いろんな方向からの講演があって楽しかったです。生き方を一人一人よく考えることが次のすべての人が幸せになる社会を創っていくと思いました。(四日市 50代 女性)

人類持続の要件― 人類の持続にとって必要条件は--「他のいのちに対する共感」であることを信じて活動していきたい。地域再生につながる活動を。(静岡県 60代 男性)

現地からの報告によりこれからの社会のあり方を考える大切な機会をいただいたように思います。(無記名)

東北の様子や環境技術まで幅広く専門的なお話も聞かせていただいて貴重でした。(市内 30代 女性)

皆様のお話を聞くことが出来てありがたく、元気をいただきました(市内 70代 女性)

自然と共生する社会について考えていきたいと思います(市内 70代 男性)

震災における人間の生き方を考えさせられた。(金沢市 50代 男性)

(写真:中村聰史 文:いわた)  


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