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大女優たちを歌って躍らせた若き監督@ A

映画『8人の女たち』(フランソワ・オゾン監督・2002年・フランス)

映画を通してフランスの歴史を知る 第11回 《1月21日》 



        講師の大嶋優さん(関西学院大学フランス語講師)

1月21日、今年最初の大嶋講座「映画を通してフランスの歴史を知る」が開かれた。どうもこのタイトルと講座の内容とに距離感がある。知るのは歴史ばかりではなく、フランズ文化全体に及ぶし、人生や生き方といった内容も含んでいる。それにタイトルから受ける硬い印象とは違い、もっと娯楽性を帯びている、ということで記者としては、ふさわしいタイトルを考案したいところだ。

さて、今回見た映画は若き
フランソワ・オゾンが監督した『8人の女たち』。34.5歳という若さで、大女優相手にその魅力を引き出している作品。その力量と才能の凄さを大嶋さん繰り返し強調した。
「女優たち一人ひとりを、歌って躍らせているんです。この監督は」と。

まずは、吉田順一さんのレポートでこの日の様子を紹介したい。また、最後に2編、参加者の感想も取り上げた。


映画『8人の女たち』を観て

SCSに着く。大嶋さんが、ちょうど話しているところだった。ホワイトボードにはしっかりと文字が書き込まれている。

ロベール・トマ
 『罠』
 『 8人の女たち』

そしてその下にはフランソワ オゾンと書かれ、『8人の女たち』と続いていた。
一ヶ月振りに見る大島さんの語る表情は、溌剌として見えた。




「映画が観たい」

僕は最前列に座った。3分もしないうちに心は落ち着いていった。SCSに小走りに向かう時にも感じていた「映画が観たい」感は、静かにではあったが、まだ続いていた。僕の中に起こっているこの感覚は一体どんなものなのか?テレビではあるけれど映画を見てはいる。しかし、今回初めて感じた「映画が観たい」という欲求のようなものは、どう消化されてゆくのか、そんな楽しみを持ちながら、大嶋さんの解説に聞き入っていった。

映画にはいろいろな楽しみ方があるのだろうな。僕には、今回初めて総合芸術としての映画というような感覚が、感じられた。そのストーリー、それを演じる俳優たち、その心理描写、映し出される背景と、ひとつひとつの家具をはじめとした、小道具たち、まだまだいっぱいあるのだろうな。映画を映画としてより豊かにしてゆくものは。

日本の演劇界でも上演されているこの『8人の女たち』、映画はこの演劇のストーリーはほとんど変えずに創られているという。大嶋さんの解説する中で特に心に残ったのは、登場する8人の女優を踊らせ、そして、ひとりひとりに歌を歌わせている、このフランソワ・オゾンという映画監督の力量を語る時の大嶋さんだった。

そこには、以前観た映画「憎しみ」の、カソビッツ監督を語る時同様の、尊敬と畏敬の念の込められた、熱い情熱のようなものが、発せられているのを、僕は感じた。


映画『シェルブールの雨傘』(1964) トリーヌ・ドヌーヴ(左の女性)主演、当時21歳。

「シェルブールの雨傘」に出演した当時は21歳だった、カトリーヌ・ドヌーブ。このミュージカル映画では、全て吹き替えが行われ、一切歌を歌っていなかったと聞き、用意された映画を見せてもらったけれど、どうしても歌っているように見えてしまう。そのドヌーブも歌い、踊る。


『8人の女たち』(2002) 58歳のカトリーヌ・ドヌーヴ。歌い、踊っている

殺人事件「犯人はだれ?」

雪で外出が不能になった一日の、ひとつの家での殺人事件。
「犯人はだれなのか?」

皆が疑心暗鬼になって、お互いがお互いを非難しあったり、時には、心が溶け合いお互いに抱きしめ合う場面も出てくる。しかし、「一体犯人は誰なのだろう?」

黒人女性のメイドシャネルが、「わかったわ!」と言って2階に上がり再び居間に降り立った時、「ズドン!」とピストルの音、そして、彼女はその場に仰向けに倒れる。そして、謎解きが推理小説が好きな17歳のカトリーヌによって始まる。

「死んだもの」となっている僕の頭には、最初「生きている」と聞いた時多少の混乱があった。ずっと、「誰が犯人なのだろう?」という目で、8人の女性を観察していた僕だったから、それがひっくり返った時には面白くもあった。

8人の女優が歌った歌を僕は知らない。でも、どの歌も「ああ、次は歌を歌う場面かな?!今度は誰が歌うのかな?」と時間が経つうちに心待ちにしている僕がいた。時々は、僕の心の中に唐突な感覚も起こったりしたけれど、そこはミュージカル自立ての映画ということなのかな?と感じた。
動く絵画を鑑賞するようなそんな映画だった。


『8人の女たち』(2002)

最後に「8人の女」を演じた女優さん達が、横並びになって、そしてひとりひとり手をつなぎ挨拶をする場面は、まるで舞台で演じた役者達が、揃って客席の観客におじぎをしているような、華やかな幕切れだった。

会が終わった後、中井宅にて大嶋さんと話す。
「フランス映画の“底流を流れるもの”を、もっと出してゆきたい」と、聞き、ますますこの先も、大嶋さんの紹介するフランス映画から目が離せない感じがした。
それからもちろん大嶋さんという人間からも。
「映画を観たい」という僕の欲求は、静かに満たされてゆく感じが、今しています。

(吉田順一)


もし『8人の男たち』だったら自分は誰に?

単なる娯楽映画ではない、中身のある映画だった。ミステリーを推理していくという興味よりも登場人物の人間模様が面白い。人間社会の縮図が表れているようだった。それを8人の女性に仕立て、喜劇っぽく語られている。もしこれが「8人の男たち」だったら、自分はどのタイプになるだろう、と考えた。(郡山恒久)

会話が次の展開を生む

一人の男性が死んでいるという状況で女性たちが歌って踊るという設定に最初違和感があった。が、途中から感じなくなった。原作は戯曲だと聞いたので、映画を見ながら劇場風景が浮かんだ。場面は、1階の広間と2階の個室だけ。それだけで一本の映画になっていたのに感心した。

女性どうしの会話はシリアスでミステリアス。その会話の中に次の展開が引き出され、次から次へと真相が明かされていく。そして一番下の娘が最後に真実を明かし、総ざらいしていく。その筋立ての凄さに驚いた。

また、オギュスティーヌが色気のある女性に変身し、メイドのルイーズがメイド業を捨てる変貌振りなど驚くことばかり。衣装、歌、踊り、ストリーとドラマ性のある展開に必見の価値ありと感じた。

カトリーヌ・ドヌーヴの21歳で主演した映画『シュルブームの雨傘』を最初に見たが、その後『8人の女たち』で59歳と円熟した姿を見て、これもよかった。その役者としての積み重ねが感じられた。

クラウディア・カルディナーレが主演した『ブーベの恋人』という映画がある。それを思い出した。自分にとっての恋愛映画の原点になっている。いつか、この映画もここで見てみたい。

中井さんが『シュルブールの雨傘』の映画とそこに登場したドヌーブの魅力を語った。殺伐とした時代背景と異性への憧れがBGM音楽に紬かれて心の内に響いた‥。想像でしかないが、共感し、自分の個人的な体験では『ブーベの恋人』が蘇ってきた。(鈴木英二)

レポートは続く
(いわた)→→→映画に込められたミステリー

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